公正証書とは?
公正証書(こうせいしょうしょ)…おそらく多くの方には、聞きなれない言葉でしょう。
公正証書とは、公証役場という場所で、公証人という法律のプロに作ってもらう書面のことです。
協議離婚と公正証書にはどういう関係があるのでしょうか?
協議離婚にあたり夫婦が取決めした内容は、口約束ではなく離婚協議書として書き残しておいたほうがよいことは、前の離婚協議書のところで説明したとおりです。離婚協議書で約束した内容は、夫婦の離婚が成立した後ももちろん有効です。
しかし、(元)夫が、離婚協議書に記載した約束通りに養育費の支払をしない場合、妻はどうすればよいのでしょうか。
- ① 約束通りに払うように、(元)夫に連絡をする。
- ② それでも効果がなければ、妻は家庭裁判所に調停の申立てをする。
- ③ 調停で夫から「きちんと支払うという」約束を取り付けて、それを調停調書に書いてもらう。
- ④ それでも約束通りに支払いが行なわれないときは、裁判所に強制執行(給料等の差押え)の手続きをとる。
ことになりますが、強制執行できるまでには、たくさんの作業と時間が必要です。
一方、離婚について取り決めた内容を、離婚成立の前又は直後に公証役場で公正証書(執行認諾文言付き)にしておけば、上のように夫が公正証書で約束した通りに支払を実行しない場合、①~③の段階を踏まずに、直接④の強制執行の手続きをとることができます。
これは、執行認諾文言を付けて作成した公正証書は、「公正証書で約束した内容を守らないときは、強制執行されても構いません」ということを公証人に対して述べた書面なので、このような公正証書は、裁判の判決と同じような効力(債務名義と執行力)が認められて、公正証書で約束した支払が実行されないときは直ちに強制執行という強い手続きを取ることができるのです。
したがって、公正証書を作成すると、次のような効果が期待できます。
- 債務名義としての効力(誰に支払義務があるのか明確にし、支払義務者の財産を差押えできる)
- 証拠としての効力(公証人の面前で作成する書面なので、信用性が非常に高い)
- 心理的圧力になるという効力(「約束を守らないと財産を差し押さえするよ!」というプレッシャーを相手にかけることができる)
以上のことから、離婚についての取り決めは離婚協議書ではなく、できれば公正証書として作成しておくことを強くお薦めいたします。
離婚公正証書の作成は、離婚専門行政書士に相談しましょう。
公正証書作成の流れ
公正証書は、基本的には契約の当事者(離婚の場合は夫婦)が一緒に公証役場の公証人のもとに出向いて作成します。
ただし、仕事や地理的な都合により当事者の一方または双方が公証役場に出向くことができないとき等は、代理人が公証役場に出向くことができます(委任状が必要です)。
公正証書は、夫婦が一緒に公証役場に出向いて、公正証書に記載して欲しい内容(離婚にあたり夫婦が取決めた内容)を口頭または書面で公証人に伝えれば、公証人がその内容を公正証書にしてくれます。
しかし、公証人の仕事は契約書面の作成ですから、個々の離婚相談にまで対応してくれるわけではありません。
つまり、夫婦が公証人に伝えた内容に問題がなければ、公証人はその通りに公正証書を作成してくれますが、公証人は離婚相談のように夫婦の離婚理由、共有財産等の詳細までは質問しませんので、「離婚後こんな心配はないの?」「こんな内容も取り決めておいたら?」というアドバイスを受けることはできません。
公正証書の作成は、離婚専門行政書士に相談しましょう。
よりご夫婦の事情に合致した公正証書を作成することを希望する場合、公証役場に行く前に事前に離婚専門の行政書士に相談する、または離婚専門の行政書士のサポートを受けながら公正証書を作成することをお薦めいたします。
「札幌離婚相談ねっと」では、公正証書の原案作成サービスを行なっています。
まずは、相談者(通常はご夫婦の一方)と札幌離婚相談ねっとの行政書士が面談を行ない、ご夫婦の離婚原因や離婚の話合いの様子、離婚後の不安等についてじっくりとお話しを伺い、公正証書の原案を作成します。
原案の内容がよければ、行政書士が公証人と打合せを行なって、公証人には法律的な判断やアドバイスをいただき、より効果的な内容の離婚公正証書の作成を目指します。
公正証書作成にあたっては、公証役場へ納める手数料がかかります。手数料は、公正証書に記載する内容の金額により異なりますが、離婚の内容であれば3~5万円くらいで収まるケースが多いように感じます。詳しくは、公証役場での手数料 をご覧ください。