札幌の離婚業務専門行政書士 木田晶子です。

最近、「卒婚(そつこん)」という言葉をよくネットや雑誌で見かけます。

卒婚の定義は、「結婚生活からの卒業」「離婚はせずに、夫婦関係をリセットして夫婦それぞれのライフスタイルを楽しむこと」と、最近の造語なだけあって、曖昧。

また、卒婚は、「箱を残しておく」と表現しているものもありました。

おそらく、夫婦のよりどころとなる場所(自宅不動産など)を残しておくということなんだと思います。

 

寿命が長くなって、ライフスタイルも多様化個人が尊重される現代、夫婦はこうあるべき!という感じも希薄になってきているので「卒婚」というのが流行ったり、選択肢の一つになるのも仕方がないのかもしれませんが、ただ、実務家である行政書士としては、この「卒婚」というのは、なんだかスッキリしません。

もし、定年を迎えて、子育ても卒業したご夫婦がいて、夫は、田舎に引っ越して晴耕雨読の生活がしたい。

妻は、住み慣れた土地で生活したい。

となったとき、「じゃあ、2週間ずつ田舎と、現在の家で暮らそう」と、合意するのが「卒婚」の理想的な形だと思います。

でも、現実は夫は、「オレに付いて来れないなら、夫婦の意味はない。離婚だ。」と言い妻は、「年金のことを考えたら、今さら離婚なんてありえないというやり取りで、別居が始まり・・・・それぞれ、好きなことをして生活を楽しむ

たぶん、これも「卒婚」に入ると思うのですがこういう形態のほうが多いのではないでしょうか。

このような形態で始まった「卒婚」生活の場合、元に戻れる「箱」は、果たしてあるのでしょうか

もし、この夫婦に、親の介護、「婚姻費用」と言われる生活費の負担など夫婦で解決しなければならない問題が発生したとき本当に互いを思いやり、誠実に協議して解決していくことができるのでしょうか

妻は、夫婦関係を「卒婚」の状態と捉えていても、夫は、夫婦関係は破たんしている、と考え身の回りを世話してくれる女性が近くにいるとしたら・・・・

実務家というのはイヤなもので、こんなことばかり考えてしまいます。

もし、「卒婚」を選ぶ熟年夫婦がいるのなら、夫の財産は妻に、妻の財産は夫に、と互いに遺言書を作り合うことができる特に妻が、「卒婚」生活後にお金に困ることがないよう夫が生活費の負担を約束する定期的に、連絡や面会をするこのくらい正式な約束をする覚悟がないと、それは理想的な「卒婚」にはならないのではないでしょうか。