夫婦が離婚することになり、妻(子の母親)が離婚後の子の親権者となると仮定して説明します。

夫婦が離婚すると、一般的には妻は夫の戸籍から除かれ、妻は「元の戸籍に戻る」または「新たな戸籍を作る」ことができます。

妻(子の母親)が離婚後の子の親権者となる場合には、妻は新しい戸籍を作り、その戸籍に子を入れるという「子の氏の変更」手続きが、比較的多く行われています。

「子の氏の変更」は、民法では次のように規定されています。

民法第791条(子の氏の変更)

1項 子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。

ここで注目したいのは、変更後に名乗ることができる氏が、「親権者である」父又は母に限られていないということです。

つまり、条文をそのまま理解すると、

夫(子の父親)が離婚後の子の親権者となり、妻(子の母)が離婚後の子の監護者となったようなケースでは、子が一緒に暮らす母親と同じ氏を名乗りたい(「母親の戸籍に入りたい」ということ)、又は母親が自分と同じ氏を子に名乗らせたいというときに、そのような裁判所への申し立ても可能というように読むことができます。

しかしながら、以前、家庭裁判所の相談窓口で確認したのですが、裁判所では子が親権者でない母親の戸籍に入りたいときは、まずは子の親権者を父親→母親に変更する手続きを行ない、その後で子を親権者となった母親の戸籍に入れるように指導している、ということでした。

したがって、もし、子を親権者ではない母親の戸籍に入れたいというときは、まずは裁判所で相談をして、どのような手続きを経ていくことになるのかを十分に確認する必要があります。