強制執行ってなーに?
こんにちは。行政書士の縁山記孝です。
今日は、業務に関連する事を書きたいと思います。
テレビやネットでたまーに見聞きする用語、「強制執行」。
よくよく考えてみると、強制的に執行って何?ってなる人もいると思います。そこで、「強制執行とは…の財産を差押えすること」のように書かれていたりするのですが、では、そもそも差押えって具体的にどんな場合に、どんな事するのでしょうか?
離婚のケースを例にとって、なるべくやさしく説明してみたいと思います。
A男とB子夫婦は、A男の浮気が原因で現在離婚に向けて話しあい中です。そこで、B子はA男に対して、慰謝料300万円欲しいと主張しています。そして協議の結果、自分の非を認めたA男は離婚後に6年分割で全額支払うという約束をして、その旨を「離婚協議書」という書面にして離婚しました。
その後、A男は3年間きちんと支払いをしてきていましたが、その後急に支払わなくなりました。この時点で、慰謝料の残額は150万円でした。
そこで、B子は裁判でA男を訴えて慰謝料150万円を回収しようと考えました。
幸いにも離婚協議書という書面を作ってあったので、それが勝利の決め手になり、B子は裁判で勝ち、慰謝料の残額150万円を手に入れる権利(債務名義と呼ぶ)を裁判所に認めてもらいました。
ところが、裁判に勝っただけでは、裁判所にB子の勝利「150万円を手に入れる権利があること」が証明されたに過ぎません。
B子が、本来の目的(現実に150万円を手にすること)を達成し満足を得るためには、その後あらためて裁判所に対して、「元旦那Aの財産から無理くり150万円回収して下さい」っていうお願いをしなければならないんですね。
そうなんです。無理くり=強制ですよね?回収=執行なんです。
この「無理くり回収する」のが強制執行であり、その強制執行の代表的な方法が「差押え」と呼ばれる手続きなんです。
そこで、いよいよ差押えの説明に入ってきます。差押えっていうのは、お金を請求できる人(債権者)がお金を請求される人(債務者)の財産から一定の手続きでお金を回収することなんですね。
その財産の具体例としては、金銭(預貯金、給与等)、不動産(土地や建物)、動産(不動産以外の物、自動車やバイク等)などがあります。
そして、一定の手続きとは、上に挙げた金銭、動産、不動産に対してある手続きを踏むことでお金の回収をすることなんですが、今回は一番ポピュラ―なものとして、金銭に対する差し押えについて説明します。
以下では上のA男とB子夫婦を例に説明しますね。
主演:
A男(妻と離婚することになった会社員)
B子(A男の貞淑な妻)
甲銀行(A男が給料等を預金している銀行)
B子がA男の預金からお金を回収するケースで説明します。裁判の結果によりB子はA男に150万円請求する権利があります。また、A男は甲銀行に対して銀行から預金を取り立てること(言い換えると、預金を下ろすこと。)を請求する権利があります。
この状態において、B子が裁判所に対して差し押えの申立てをすると、裁判所は、A男と甲銀行に対して、それぞれ差押命令という命令を出します。
そうすると、A男については「甲銀行に対して預金の取り立てする事」を禁止され、甲銀行については「A男に対して預金の支払いをすること」を禁止されることになります。
※小さくて申し訳ありませんが下記のイメージ図を拡大してご覧ください(^o^)
甲銀行によるA男への預金支払いが禁止されるわけですから、A男がいくら預金を下ろそうとしても下ろせなくなりますよね?そうなると、A男の預金は依然として甲銀行の手元にあるという事になります。つまり、差押えされてしまうとA男は自分のお金を自由に下ろすことができなくなるのです。
その結果、B子は甲銀行にあるA男の預金から慰謝料の残額150万円を支払ってもらえるようになります。
こうして、A男は裁判所という国の機関によって、強制的に自分のお金を執行(回収)され、B子は自分の目的を果たす事ができるようになります。これが差押えです。
ただ、実際に差押えするにはその前段階でそもそもA男にめぼしい財産があるのかということ、財産があったとしてA男の口座がどこの銀行の何支店にあるのかという事まで特定する必要があること、そしてそれらをB子側で調べなくちゃいけないこと、また、金や時間や労力をかけて裁判やっても勝てないと最終目標である差押えまでたどり着けないことなど壁があります。
もし、離婚協議の時点で相手方が将来的に慰謝料や養育費を支払ってくれる意思があるのなら、近い将来に相手の気が変わってしまう前に離婚協議書を公正証書にしておく事をお勧めします。離婚公正証書なら、今回の例でB子が裁判で勝ちとって認めてもらった権利(差押えを申し立てる事が出来るようになる権利)と同じ権利が認められるので、万が一の際の差押さえの時には便利です。
もちろん、相手の財産の有無やその所在については調べなければいけませんが、少なくても裁判に費やす費用、時間、労力を省略できるので、その点については楽ちんですよね。
なお、離婚公正証書の説明については、木田先生の過去の記事をご覧くださいね(*^_^*)
ということで、今回は業務に関連することを記事にしてみました。
今後もたまに業務に関連する事も書いてきますので宜しくお願い致します。