離婚公正証書作成のお手伝いをするときは、まずはご夫婦が合意した事柄を聞き取りします。

私は、「約束が法律的に有効かどうなのか、は置いておいて、合意した事項をすべて教えてください」と伝えて、ご夫婦間にどんな離婚原因、離婚後の不安があるのかを把握するようにしています。

その合意事項に、法律的にダメ(無効)な内容が含まれていることは、やはり少なくありません。

例えば、タイトルにもある「夫が浮気相手と結婚しないように」という内容は、法律上の問題があるので、公正証書に盛り込むことはできません。

法律上、どのようなことが問題かというと、

  • 夫婦は離婚すると他人になるので、その後の結婚を制約することはお互いにできない。
  • 女性は前婚の解消(つまり離婚)の日から6か月を経過しないと次の婚姻ができない(民法第746条)規定があるが、男性はこのような規定がない。

ということです。

公証人は、法律の専門家ですから、法律に基づく内容のみ公正証書にしますので、夫婦が「夫が浮気相手と結婚しないように」ということに合意していたとしても、公正証書に記載することはできません。

ただし、夫婦が公正証書には書いていない合意事項として、「夫が浮気相手と結婚しないように」という約束をすることまで、制限するものではありません。

したがって、「夫が浮気相手と結婚しないように」という合意書などを任意に作成しておくことは可能です。

しかしながら、『「夫が浮気相手と結婚しないように」という約束を破って、元夫が結婚した!』となっても、このような約束は法律上はそもそも無効なのですから、この約束を根拠に慰謝料を払ってもらうことができるかは、非常に難しいと思います。